カサンドラ症候群

カウンセリング症例
  1.  揺れる家庭

「夫が帰る時間が近づくと、息苦しくなってしまう。」

夫と子供2人と暮らす40代のAさんは、夕方になると、

鼓動が激しくなる。

数年前から体調不良が続き、今年初めに鬱病と診断された。

夫は言葉で感情を表現できない人。

心の内を知りたくて、ずっと悩み続けていた。

約20年前、2年の交際を経て結婚した。

頭が良くて物静か、真面目な人柄にひかれた。

気持ちが通じないといった僅かな不満はあったが、

「男の人はそんなもの」と思っていた。

歯車が狂い始めたのは子供が生まれてから。

家事や育児に追われても、夫は手伝うこともなく、

規則性のある生活を崩そうとしない。

気に入らないことがあると激高し、目の前でおもちゃ

などを投げて壊す。

友人や医師に相談しても理解は得られなかった。

あるとき、発達障害の一つ、自閉症スペクトラム障害

(ASD)に関する本を読み、

・こだわりが強い

・視覚や触覚が過敏

・冗談が通じない

などの症例に、「夫のことだ」と確信した。

今年に入り、病院で夫のASDの疑いを指摘され、夫婦での

受診を提案したが、夫は拒否をした。

仕方なく子どもの前では「夫婦」を演じるが、一時は自殺

を考えるほど追い詰められ、体重が10キロ近く減少し生理も

止まった。

ただ、経済的な問題などを考えると離婚に踏み出せない。

「出口にないトンネルにいるようで、1年後の自分が見えない。

どうすればいいのかわからないんです。」

見えない障害

Aさんのように、発達障害者や疑いがある人と情緒的な疑いがある

人と情緒的な相互関係を築けず、そのパートナーや家族ら周囲の人

が心身に不調をきたす状態を「カサンドラ症候群」という。

ギリシャ神話の神、アポロンに予知能力を周囲に信じてもらえない

呪いをかけられた女性、カサンドラの名前に由来する。

正式な病名ではなく、症状としては抑鬱や自律神経失調症などが

見られる。

精神科医は、「カサンドラ症候群は夫婦関係に多く、苦しみを

周りに理解してもらいにくい。

家庭内の問題として医療機関が介入しづらく、根本的な解決に

なかなかたどり着けない」と、指摘する。

アスペルガー症候群を含むASDには、表情や気持ちを読み取っ

たり相手の立場になって考えたりすることが非常に苦手という

特性がある。

カサンドラ症候群の背景には、こうした「見えない障害」への

理解や関わり方のむずかしさがあるとみられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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